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「線」の見取り図
創作インタビュー
いろんな条件が重なってその人がいるんだなと思うと、いま自分の作品を見てくれている人のことも、そのいのちも肯定したい
アーティストとして活動し、インスタレーションイベント『umino-ito』を企画するタキナオ氏。創作初期段階のインタビュー記事全文をあまり校正を入れずに掲載することで、これまでとこれからの生々しいソウゾウ活動の一片を描く見取り図です。
February, 2023

|『umino-ito』の企画をふわふわと考えていた
去年(2022年)の10月に『海を孕みくる』を上演して、それが自分の表現の根幹でもあるなと思ったんです。わたしが絵を描いていたところから映像表現もはじめて、いろんな人とコラボしていく中で、何年か前から、建物を建ててそこに映像を投影したいなというイメージはあって。(『umino-ito』でオブジェ製作を担う)Carpentryさんと笠寺の別のイベントで出会い、その後にもちょっと関わったりもしたのもあって、いつかつくってもらった舞台でパフォーマンスしたいなと思っていたのと、『海を孕みくる』を一緒にやったメンバーともまたやりたいねと熱が高まっている状態というところもあり。もしやるとしたら今まで交流のある笠寺さんでやらせてもらえたらいいなと、ふわふわと考えていたのが企画のキッカケです。
|『海を孕みくる』は2022年初演からのリクリエーションとなる
完全再演でもなく初演時から深めるかたちで、ひとつ踏み込んでいきたい。前回はかなり即興的な感じで、3人が持ち寄ったものをぶつけてみる感じが大きかったんですけど、今回は構想を深めたりテーマやイメージをより共有しながら進めていて、コミュニケーションを密にしながらパフォーマンスをやることで表現が深まるといいなと思っています。初演は音楽と映像の展示とオブジェクトで空間のインスタレーションとしてつくり、その展示の中のひとつのイベントとして即興的に3人で大きなイメージだけを共有してパフォーマンスをしたんです。展示の空間自体が生命の誕生からイメージされていて、体内で起こっている現象もだし、ここにつながってきたこれまでのいのち、ご先祖さまのようなイメージも絡めていたので、そこからイメージを深めたパフォーマンスにしたらどうなるかなというところに興味がありました。
|うまれるというのは自分の普遍的なテーマ
うまれるというのは自分の製作の普遍的なテーマです。異質なものがぶつかってまた新しいものがうまれる。ドローも色がぶつかって有機的ななにかがうまれてくるという感じがある。いま自分が生きていることとか、目の前に人がいることとか、展示で空間に人が集ったり、ライブで空間を共有したり、というのは凄い確率でうまれてきている。本当にひとりひとり違うな、同じ人はいないんだなと思うし、いろんな条件が重なってその人がいるんだなと思うと、いま自分の作品を見てくれている人のことも、そのいのちも肯定したい。いま来てくれている人の存在を大切にするために、背景に生命の誕生の奇跡のような数々があったり、いまの人につながる命があったりしてあなたがいる、ということを表現したくて「生命の誕生」というテーマをフォーカスしました。
|『umino-ito』で注目してほしいところ
ご縁結びの伝承の残る笠寺観音の境内で行うパフォーマンス公演やワークショップ、まちあるきなどいろいろあるイベントなので、それぞれで好きなところがあると思うけど、そこプラス興味を広げて楽しんでもらえるといいなと思うし、いままでアート作品に身近でなくても気軽に触れる機会になったらいいなと思っています。インスタレーションの製作過程の公開では、普段の笠寺さんと違う、日々変化していく様子が間近で見られます。ワークショップは、誰でも使いやすい素材で楽器づくりをします。講師の広沢さんは音を見つけるのが上手で、日用品のそんなものが楽器になるんだというものを楽器にするので、みんなで気づいたり、つくったり、ワイワイする時間を楽しんでほしいし、気軽にやってみてほしい。ワークショップ午前の部に併催する「まつこ島ちんどんやさん」では演奏しながらみんなでワイワイとまちを歩くのはきっと楽しいし、こんなところあるんだとまちと出会うキッカケになってほしい。午後の部併催の演奏会では、即興的な演奏会でどういうふうになるか想像もつかないけど、その日にうまれたみんなの楽器でどんな合奏になるのか、どんな音が生まれるのか、音との出会いを一緒に楽しめたらいいなと思う。その場に集った人たちで何が起きるか楽しみです。パフォーマンス公演は、インスタレーションとしての舞台をつくるところからなので初演を観てくれた人にも全然違うものになるし、COFFEE POLITEさんには、共有したテーマからブレンドしてうまれた珈琲を提供してもらえる。時間と空間を堪能してもらえたらいいなと思います。公演に導くumino-itoまちあるきツアーは、先日自分も体験してみて、歴史や地名について教えてもらって、ただのことばがイメージをともなうことで親近感をもてたり、昔はどうだったのかとイメージが広がったりして身近に感じられたり、想像させられたり。聞いてからだと、より『海を孕みくる』の観方が変わる。笠寺がかつて海に囲まれた「まつこ島」だったという説明を見て、聞いて、昔の笠寺に思いを馳せながら、もう一度会場に来てもらうことで、より作品のテーマとしているところに入りやすくなると思います。
|今回会場に選んだ笠寺の土地がもつ魅力
笠寺ではじめて参加したシャッター壁画(2010年)が自分のなかでめちゃくちゃ大きなできごとで、いまの活動にかなり関わっています。そこでうまれた出会いからの変化があり、ご縁ができた人と笠寺でいろんなことをやらせてもらいました。笠寺の地域の人たちのバックアップがすごく力強かったり、やりたいことをサポートしてくれたり応援してくれたりした。ご縁結びのご利益あるなあと思ったし、笠寺で出会った人たちに感謝しています。
|ご縁結びの場に
『umino-ito』は文化芸術×観光・まちづくりで名古屋市の助成事業に採択されています。分野の異なるまちづくりなどの方々と一緒にやるのは、これまでコラボレーションしてきたのと感覚は違わなくて、それぞれの力を出し合ってどんなものがうまれるかが面白いところ。そもそもアートということばをアーティストだけがもつものだと捉えていないんです。その人がその人であることだったり、その人の何かが発露したりしているのがアートだと思う。日々忙しく過ごしていると、日常の暮らしで削ぎ落としたり見落としたりすることがあるかと思うけど、アートにふれる喜びが身近に感じられるキッカケになるような『umino-ito』にしたい。いろんな分野と関わることで、そんな出会い、ご縁結びの場になったらいいですね。わたしにとっても外の広いところでやることでいろんな人との出会いがうまれることを楽しみにしています。
語り手
タキナオ
アーティスト
聞き手
紺野ぶどう
オーチャードシステム 代表