知らズ知らず2020
演り人知らズ
ライナーノーツ
イザワヒロト
『知らズ知らず2020』
アシスタントキュレーター
今、私たちにできることは何か。考え続けた30日間の葛藤、そしてこれからも...。
演り人知らズ企画展『知らズ知らず2020~入れない展示~』にて、アシスタントキュレーターを担ったイザワヒロト氏に寄稿頂きました。内側から創作に携わったからこそ覗き返すことができる、作品をより深掘りするためのライナーノーツです。
September, 2020
活動の自粛、施設の閉鎖、稽古場の確保が困難、不可能。目に見えない何かにじわりじわりと締め付けられ、身動きがとれなくなっていく、そんな感覚。一体どうなってしまうのか。そもそも演劇とは、芸術活動とは。 場を作ること、場を提供することが一番の活動だったはずなのに、それをしてはいけない苦しさ、もどかしさ。今、自分たちにできることは何なのか。
失って見いだされる価値。知らず知らずに、当たり前だった日常。 その一つ一つを改めて検証することで、自分たちが今まで行ってきたことを棚卸しする作業から始まった。そもそも「演り人知らず」とは何だったのか、何を目指していたのか。それをこの機会に多くの人に知ってもらおう、ということになった。それがパネル展示という形で具現化された。
現実に人が集まることが難しかった自粛期間。もういっそのこと「入れない」展示があっても良いのではないか。劇場に入れないという矛盾。ガラス張りの向こうに。「不在の存在」と名付けられたインスタレーション。本当だったら、この日この時間に演劇作品が行われていて、観劇する人が集まっていたはず。そんな思いも無いわけではない。いつものようにギャラリーの電灯は灯されて、椅子が並べられている。外はよく晴れていて、時より公園で遊んでいる子どもの声が聞こえてくる。そんな時間の流れが360度カメラによって克明に記録されているオンライン作品も。
自粛、中止、できなくなることへの不安。それは単なる「できなくなる」という喪失感だけではなく、これからの未来を摘み取られてしまうのではないか、という不安感。
『知らず知らずのうちに文化芸術の灯が消えていくこんなときだからこそ、活動を知ってほしい演り人知らズの企画展。』そう題された今回の企画展。何かを恨んだり、何かを悔やんだりできるわけではない。目に見えない。そんな日常の空気感に、抗う。いや、とにかく灯が消えてしまないように、何かをするだけである。蝋燭の火が消えそうになったら思わず手で囲うように。
きっと知らないだけで、多くの人がそうしているし、そうしていくのだろう。