
ライナーノーツ
KANAMORIN
『屋上の父帰る』音楽
屋上の父帰る
Contondo #16
ものを作っているとなんでもないようなもろもろが繋がって循環しているなと感じる。
Contondo #16『屋 上の父帰る』にて、劇中曲の作曲を担ったKANAMORIN氏に寄稿頂きました。内側から創作に携わったからこそ覗き返すことができる、作品をより深掘りするためのライナーノーツです。
May, 2021

「家族」というものは概念である。人によって意味合いは違えど、必ず誰にでも存在する「個が個たり得るファクター」の1つなのである。この世に生まれるには「家族」が必要だ。
今作は「家族」をキーワードに令和と明治を行き来するお話。それは現実なのか空想なのか、それすらも定かではない。しかしそこには確実に「家族」が存在していて、各々の在り方となっている。僕はどちらかというと義太郎サイドの人間である。それは確実に音にも影響がでて、義太郎に寄り添えていたのではないかなと。この作品は誰に共感するかで感じ方や意味合いがガラリと変わる作品だと思う。
僕は作曲や作品制作にあたり、感じた色のようなものを具現化していく手法がほとんどである。今回もまず各シーンの色から感じたまま曲のコードなどを出していった。ざっくりと今回は 令和⇔明治 が E♭⇔D♭の間で行き来していて、最終的にすぐ隣だからこそ今までどこにも属さなかった D に義太郎はたどり着いた。この手法の不思議なところは意図せずとも整合性が取れてしまうことがある。出た後に自分で納得をするということも多い。ものを作っているとなんでもないようなもろもろが繋がって循環しているなと感じる。大きい流れというか、なんというか。「家族」もその中の1つなのだなと妙に腑に落ちた瞬間があった。

作曲時に台本を読んでいてひしひしと感じた「幸せ」とは何か、という問いかけ。これは生きる上での永遠のテーマですよね。答えには簡単に辿り着けないから求め続けれるのかもしれない。求める先があるというということは幸せなのかもしれない。きっと過ぎ去って忘れかけた頃に、今目の前にあるものの意味をふと実感をするのだと思う。