いば正人
2021陽春シーズン
ゲストクリエイター
演り人インタビュー
いば正人
『シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン』演出
やっぱり演劇人は叩かれても起き上がる。だから大丈夫だなと。これから何かあっても、演劇をやりたい人はやりたいんだな。
演り人知らズ初期作品のひとつ『シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン』について、名古屋で活動する「劇団蒼天の猫標識」のいば正人氏がゲストクリエイターとして演出を担います。コロナ禍で文化芸術が大きく傷つくなか、その思いを伺いました。(聞き手:紺野)
March, 2021
―これまで、劇作家として戯曲提供(「夫のオリカタ」)や、役者としてご出演(演り人博覧会『キズグチ』|2018)をいただいてきたのですが、今回はゲストクリエイターということで、レパートリー作品に演出家としてお声がけしました。
外部で演出する機会があまりなかったので、すごく楽しみです。前々から演出に集中してみたかったので。(自分の書いたものではない戯曲を演出することは)やったことないですね、初めてです。初めてだからこそ力が入るみたいな感じもあります。
シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン|2018|演り人博覧会
―今回はFOペレイラ宏一朗さんの「シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン」を上演していただきます。
素直に面白いなと思いました。読みやすかったし、この本に演出として依頼をいただいて嬉しいです。たぶん演り人知らズのレパートリー作品のなかでも、この戯曲は割と会話劇だと思うんです。僕がいつも演出しているのが会話劇なので、他の人の書いた会話を演出してみるというのはすごくやってみたいことでした。シンプルに僕が会話劇を好きなのと、いろいろとインプットしてきたものが主に会話劇だったのということがあって。どういった会話劇をつくりたいかというと、お客さんにお芝居を観ているという感覚を忘れさせたいんですね。僕はすごく引き算する演出だと思うんですよ。料理屋さんでいうと、素材の味をどう活かすか。お客さんがどういうタイミングでどの情報が入ってくるのかというイメージを強くもって、そのうえでこの情報が強すぎると余計だなと思ったところを引いていく。
―コロナ禍の今、リモート演劇や上演に繋がらない稽古など精力的に活動されています。この状況をどう捉えていますか。
例えばコロナ禍が大きく広がったばかりのときは情報がないので不安も大きくなるし、劇場にも行けないとなった。これからはコロナ禍を受け入れるとか向き合うとか、または日常化していくということが、お客さんが演劇を観に行くということと結びつきはあると思っています。お客さんがまたどんどん増えてきたら、今の世の中はそういう感じなんだなと思う。一方で、お客さんにはコロナに対して危険視をもって観劇している方もいらっしゃいます。作品に集中してほしいのに、「あ、今近い」とかそういうのを気にして、作品からずれた邪念が入ってくるのは懸念しています。ソーシャルディスタンスを意識して演出しました、というのがはっきりわかるやつでも「ああ、離してやってるんだな」と思われるのも嫌ですね。でもまあ、結構いろいろ考えたんですけど、今演劇やってる人は、割と元あった形にまた戻ってきているので、やっぱり演劇人は叩かれても起き上がる。だから大丈夫だなと。これから何かあっても、演劇をやりたい人はやりたいんだな。
2021陽春・2021初夏シーズンのゲストクリエイター(中央がいば氏)
―最後に、この上演でどういうものをお客さんに届けたいかお聞かせください。
今回の本はSFだと思う。SFだからこそ、限りなく嘘を削いで本物に近くしたい。あと、この本を読んで、(登場する)店長さんの人生ってなんだったんだろうと思うので、そういうのが見つめられるような作品にしたいと思っています。
いば正人
劇団蒼天の猫標識
劇作家。演出家。俳優。名古屋を拠点に活動。劇団を立ち上げ自身の創作作品を発表する傍ら、俳優としても他劇団の舞台や映画等にも出演。演劇の経験有無関係無しに誰でも参加できる演劇創作を精力的に行っている。
公演概要
演り人知らズ
2021陽春シーズン
シュガー、ミルク、スプーン、カップ、コーヒー、ダーリン
作 FOペレイラ宏一朗(プロトテアトル)
演出 いば正人(劇団蒼天の猫標識)
2021年
4.15thu-18sun
AHAアトリエ・ギャラリー
15thu 20:15~
17sat 15:00~/17:00~
18sun 15:00~/17:00~
キャスト
棚瀬みつぐ|美藤優佳